英語弁論大会(島根県大会)で1位に
安来市立第一中学校
島根県の安来市立第一中学校では、通常授業での活用に加え、英語弁論大会の準備にもリピートークを使って大きな成果を上げました。「令和4年度島根県中学校英語弁論大会 (高円宮杯第74回全日本中学校英語弁論大会島根県予選)」に挑戦し、見事1位に輝いた森山さん(当時中学3年生)と、二人三脚でコーチを務められた先生にお話を伺いました。
- 導入前の課題
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- 本人の自主性に任せっきりにする
- 導入の効果
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- 教員がスモールステップを設けて二人三脚
高円宮杯出場を目指して
― スピーチコンテスト出場のきっかけを教えてください
(担当教員)2021年9月に島根県予選が安来市で開催されることをきっかけに、安来市内のすべての中学校から参加者を1人ずつ選出しようということになりました。校内での選考にあたっては、森山さんが中1の時の英語の授業の様子を見た他学年の英語担当教員から推薦がありました。授業に活発に取り組み、はっきりとした英語で話したり、他の生徒のサポートをしたりする姿勢などから、適任だと思ったのでしょう。他にも立候補者がいたため、校内予選を経て、当時中2だった森山さんに決定しました。森山さんは、大勢の前で主張する力があること、学校としても高円宮杯に出場歴があること、本校の英語科がALTも含めチームとなってサポートする体制が整っていることなど、高円宮杯出場への要件は整っていたかと思います。ご家族の熱いサポートもあり、2022年は中3で2度目の出場となりました。
二人三脚のプロセス
― 本番までにどのような準備をされたのでしょうか
(担当教員)「自分に身近なトピックで」というアドバイスのもと、森山さんの弟さんがそうであることから、テーマとして「吃音」を取りあげることになりました。「バイデン大統領と吃音」(大統領は以前吃音だった)や、「吃音に関するSDGsの内容」など、本人が伝えたい内容がたくさんありましたが、最終的には「吃音がある弟さんや他に障がいがある人に、森山さん自身がどう接していくか」という部分にフォーカスすることになりました。
(森山さん)学校にも障がいのある人はいますが、「大変さを理解する」というよりも「自分たちに何ができるか」という視点から書きました。原稿の中では、中学では習わない単語も多く、同級生の中には「なんとなく理解はできるが、細かいところまでは…」という感想もありました。しかし、海外に住む友人やALTの先生からは「伝えたいことがしっかり伝わった」と言ってもらうことができ、励みになりました。
(担当教員)原稿が出来上がってから、発音練習や暗唱に取り掛かりました。当初は森山さんに「自分で覚えてきてね」と任せていましたが、学校行事もあってスピーチコンテストだけに集中する時間を作ることが難しく、ここで2つの手段を使うことにしました。1つは、英語科の教員はもちろん、管理職等からも森山さんにモチベーションを上げるような声かけをたくさんしたこと。最初は褒める方法を取りましたが、森山さん本人からは「お尻をたたいてもらった方がいいんです!」という頼もしい声がありました。
もう1つは、リピートークを使い、「パートごとの完成期限を設ける」ことで、大会までにスモールステップで着実に力をつけることができるようにしました。
具体的には、Step1-7はセンテンスごとのShadowinngとReading、最後のStep8が文章全体のShadwoingとReadingという作りにして、取り組みやすくしました。練習開始当初は制限時間内に読み切れませんでしたが、リピートークならスピード調整も可能なので、教材作成担当の方にテンポを調整をしてもらいました。その教材をセクションごとに制限時間内に読めるように練習し、最終的に全体を制限時間である5分以内に読み切れるようになりました。また、教員が自宅でチェックできるのも良いポイントで、「毎日チェックするから、音声を提出し、そのフィードバックをもとに、翌日学校で確認をする」というフローを生徒・教員間で作ることができました。これにより、学校での限られた時間で質の高い練習ができました。
(森山さん)ステップ構成が細かく作られていたので、わかりづらい発音も繰り返し聞きやすく、使いやすかったです。学校がある日は、放課後に英語の先生やALTの先生と原稿をもとに練習し、単語の発音を直してもらいました。学校がない土日や、放課後・夜の時間にも、リピートークの導入により、先生と練習をしている時のようなしっかりした練習に取り組むことができました。
見事に県大会で1位に
― 県大会当日の様子を教えてください
(森山さん)大会当日は、いつも通りの朝を過ごし、登校して朝礼に参加しました。自信があったので、当日に特別な練習はせずにリラックスして臨みました。
本番のスピーチでは、緊張せず、いつも通り落ち着いて話すことができました。しかし、持ち時間5分間中、4分30秒を知らせるベルの音にびっくりしてしまい、1フレーズ飛ばしてしまいました。それでも、最後の1フレーズを言うことができたのでよかったです。結果、県大会で1位となり、決勝予選大会に出場できることになりました。
― 素晴らしいですね。決勝予選大会(中部日本地区)はいかがでしたか?
(担当教員)この年の決勝予選大会はコロナ禍だったために事前収録したスピーチ動画が会場で審査されるものでした。余談ですが、その動画を撮影する様子を、9月の職場体験学習で森山さん自身が訪れたご縁から、地元のローカルテレビが取材してくださいました。審査用ビデオの撮影風景や、練習風景の撮影、また森山さんへのインタビューもしてくださり、地元のテレビを通して、森山さんの取り組みが地域へ周知されました。安来市全体が一体となって、森山さんの決勝予選大会突破を応援し、彼女もそれに応えようと、一生懸命に頑張っていました。
決勝予選大会の結果が出た瞬間は、ちょうど学校に森山さんと、関わった教員と一緒にいました。残念ながら決勝大会(全国大会)の出場はならず、この結果に彼女はかなり悔しがっていました。ですが、「そもそも5分間にも及ぶ膨大な量の英文を覚えて、意欲的に発表をするということ自体がすでに特別であり、それを最後までやり切ったということが称賛に値する」とその場にいた教員が彼女に声をかけていました。
最初はなかなか手付かずなところもありましたが、周りのサポートと、それに応えようと休みの日や夜遅くにまで及ぶ本人の努力で、ここまでやり切ることができました。
― お二人の将来の展望を教えてください
(森山さん)「英語で世界を幸せにしたい!」を目標に、高校では語学系に進学するつもりです。いずれは海外留学も視野に入れています。着物や茶道、またアニメなども含め日本文化が大好きで、高校では弓道にも挑戦したいです。いつか、日本文化を海外で楽しめるような場所を作りたいと思っており、和菓子と抹茶を出したり、さまざまな国の人同士が交流できたりする空間にしたいと思っています。
(担当教員)リピートークを使うことで、生徒が本気で発音した音声をじっくり聞いて評価することができるようになり、「この子こんなに上手に発音できたんだ!」という気づきを教員も得ることができました。生徒自身も、自分がこんなにできると気づいていなかった子、リピートークを使うようになって気づいた子は多いでしょう。自分で気づけた子はより伸ばし、まだ気づけていない子には教員から声をかけていきたいです。また、弁論大会を知らない生徒も多く、教員が「挑戦してみる?」と聞くと「出たい!」という子もいます。ダイヤモンドの原石を探して、これからも生徒の挑戦を応援し続けていきたいと思います。